5月10日、11日に開催された中部実業団陸上競技に、PEAKSのトレーナーとして帯同してきました。
今回は初の実業団レースでのサポート、大会の雰囲気や規模も今までとは大きく異なります。
私としては、いつも通りの選手サポートができるように、平常心で準備を行ってきました。
今回出場したのは代表の川端選手、ルーキーの土屋選手、PEAKS始動からサポート機会が多くあった2名の選手。
連戦でのサポートも経験しているため、何となく選手の特徴も把握ができ始めている頃です。
個人的に心配であった膝手術の経過も良好で、私の調整は十分間に合ったと内心ホッとしていました。
前日練習
今回は治療院でのメンテナンスや当日のコンディショニングだけで無く、前日練習の前からコンディショニングを行う事ができました。
移動の疲れを取りながら、前日調整での動きに合わせてコンディショニング。
今回はハイレベルなレースが想定されるため、選手の要望に忠実に、かつ、気づいた点を選手と共有しながらコンディションを仕上げていきました。
とは言っても、いつもとするべき事は変わりませんでした。

私の技術でコンディショニングを行うことが大半でしたが、今回は少し勝手が違います。
前回の東部選手権が終わった後、物理療法のプロである【伊藤超短波】様にお願いをして、より高度なパフォーマンスアップができるように勉強会を開いていただきました。
私も今まで活用してきましたが、勉強会を機に詳しい活用方法を知り、積極的に活用する以外無いと実感しました。
選手もその効果を実感、積極的に日々活用していたので、今回のコンディショニングは治療器の効果を計算しながら段取りを組みました。
100%1人でコンディションを仕上げることは難しく、時には想定していない出来事が発生します。
治療器を有効活用することで、以前より仕上がりのブレが少ない気がしました。

コンディショニングが終わってからは、選手の動きを確認します。
ウォーミングアップから動きづくり、スプリントまでの流れを全て確認して、選手の感覚とコンディショニングのポイントをすり合わせていきます。


調整の様子を踏まえて夜のケアを計画、練習後に選手の手応えや要望を確認して、翌日に向けて調子を仕上げます。
この段階では大きな問題も無く、スムーズに仕上がっていると思いました。
当日のサポート
この日はレース日和、気温や風が丁度良く、記録が狙いやすいコンディションとなりそうでした。
体力の消耗を避けるために、ベッドスペースは日陰に。

トレーナーの役割はいつもと同じ流れで始まりました。
朝のコンディショニング→ウォーミングアップの確認、必要に応じて再度コンディショニングを繰り返します。


実業団レースの会場は、雰囲気が今までの会場とは大きく違いました。
すぐ側には五輪選手や日本トップレベルの有名な選手、チームの関係者が大勢います。
選手は全員が自分の世界に入り込み、各々が見たことない動きや道具を使いながらW-Upを行っていました。
それと同様に、チームスタッフも選手を注意深く観察しながら、状況に応じて選手のサポートを行っていました。
ここで私が注意したのは、「選手が弱く見られないためのサポート」です。
言い方は良くありませんが、PEAKSは創立間もないチーム、この会場においては無名のチームです。
そのチームの選手が勝つためには、選手の能力だけで無く、周囲を圧倒する存在感が必要だと思います。
そのためにトレーナーに求められる能力は2つ、
- 選手の能力を底上げするためのコンディショニング
- チームが注目を浴びるためのサポートを行う
私もチームの一員として競技現場に相応しい動きを行い、選手に引けを取らないサポート役を徹底しました。
選手を送り出したら競技の観察、ハイレベルなレースを見学しながら、選手の結果を待ちます。
一般100mは予選通過ラインが高く、残念ながら予選落ち、来年のリベンジに期待です。
30歳以上100mはレベルの差が大きくなり、予選通過ラインにバラつきがありました。
予選から大会記録を狙って力を出しましたが、向かい風にジャマをされて惜しくも更新できず…


予選終了後、ここからトレーナーの能力が問われます。
大会記録更新へのサポート
今回の結果として、川端選手が大会新記録で二連覇を果たしました。

予選から大会記録を狙ってギリギリを攻めた勝負を仕掛けたため、決勝でのレースは難しい展開だったと思います。
予選が終わってから決勝までの短時間で、あらゆる面の細かな確認および修正の検討を行いました。
それだけではありません。
今回は大会記録の更新が目標、慎重に事を進めなければなりません。
今まで何度かレースに向けてた調整をサポートしてきましたが、今回は少し勝手が違うように感じました。
回数を重ねるごとに川端選手からの要望は細かくなり、私からも細かい提案をすることが増えた気がします。
前日までの過程、前日調整の様子、当日のコンディション、予選での走り、今までの経験を踏まえて決勝までのリカバリーを組みました。
この場面で最も大切なのは「トレーナーがやりたいこと」を提供するのでは無く、「選手と感覚をすり合わせる」ことです。
限られた時間の中で、
- 選手の主観とトレーナーの客観の確認
- トレーナーがサポートするべき要素
- 次のアップ計画の確認
考えている時間はありません。
選手への確認とケアを並行して行い、アップの観察、選手の送り出しまでをノンストップで行いました。
経験が物を言うとはこの事でしょうか?
予選のアップとは動きが変わり、より記録を期待させる雰囲気が漂っていました。
安心して選手を観察することができ、ワクワクしながらスタートを見守ることができました。

決勝レースはスタートから見事に抜け出しそのままゴール、大会記録を0.04秒更新での優勝でした。


離れていてもチームは繋がっている
中部実業団と同時期に、静岡県ではマスターズ大会が行われていました。
私としては両方のサポートをしたいところですが、どう考えても不可能です。
そこで、今回のサポートは事前のケアやLINEでの応援が中心です。
当日はアップの観察中やレース前の待機中に、速報を見ながら無事にレースが終わること、自己ベスト更新を待っていました。
また、実業団会場の様子やレース結果を、チーム全体に連絡していました。
マスターズ組からは続々と優勝や県新記録の結果が上がり、更にはチーム写真が届きました。

集中を切らせるのは悪いと思いつつも、結果が出てすぐにアップ中の選手に報告。
反応としては、選手の士気を上げることに繋がったと思います。
別の場所でチームメンバーが頑張っていることが、自分たちが頑張るための活力となったようです。
私のモチベーションも大きく上がり、より一層記録にこだわったサポートができた気がします。
チーム戦最初の東部選手権でも同じでしたが、同志がいると心強さが格段に上がります。
今回は2つの離れた場所、そして、会場にいないメンバーもLINEを通して繋がっています。
これがチームに属するということ、そして、チームとして競技に挑むことの意味だと思います。
この後も選手たちは、各々の目標に向かって活動を続けます。
チームトレーナーとしてできることはただ一つ、「選手の望むサポートを提供すること」です。
それが私がチームに属する意味、そして、プロトレーナーとして求められていることです。
いずれは選手としても同じ立場に立てるよう、別の方向でも努力を続けていきます。
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